シークルーズ

2020年に横浜港に寄港中のクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号の乗客が新型コロナウィルス感染症への感染が確認され、乗員乗客が船内で隔離されたものの感染が拡大したことをご記憶の方も多いのではないでしょうか。

甲板


パンデミックによってクルーズ船の乗客は世界的に大きく減少しましたが、回復しつつあるようです。
けれどもその間に顧客体験は大きく変化しました。クルーズ業界での大きな流れはタッチレス技術でしょう。

人と人との接触、つまり、乗客と乗務員、乗務員同士、乗客同士の接触を減らすことには、船内という閉じられた空間での感染のリスクを下げるという明白な利点があります。それだけでなく、顧客の乗船体験を大きく変えたようなのです。
生体認証などを使ったデジタルチェックインと簡易搭乗券は、多くの主要な航空会社で世界各国の飛行場で使われていますが、クルーズ船においても今や標準になっています。
タッチレス乗船では、乗客はパスポートをスキャンして自撮り写真と比較するだけです。実際の乗船では顔認証カメラが赤外線で体温測定もしてくれます。デジタル化されていれば、検温の結果を紙でカードに記入する必要はなく、顔認証のIDに紐づけて保存し、あとで参照することが手間いらずでできます。

RFID内蔵のリストバンドやメダルを使って乗船や船内での支払いを行えるようになっているクルーズ船が増えています。客室の鍵として自動ドアを開閉したり、飲み物やサービス、ゲームなどの支払いやアメニティの要望などをタッチレスで行えます。
紙のチケットを提示したり提出したりする方法では、乗船、下船の時刻を記録することができません。サービスの利用時刻も、記録するとなると人手を介することになります。ウエラブルデバイスやスマホを使うのであれば、時刻の記録の自動化など簡単です。

廊下


乗務員は乗客にリストバンドをスキャンしてもらうことで乗客の情報に簡単にアクセスでき、安全と快適さを提供することが可能です。一部のクルーズ船ではコンシェルジュ・デスクでの丁寧や応対に変わって客室内のAIスピーカーを使って乗客からの質問や要望に応えようとしています。
パーソナライズが可能なので、停泊地や目的地のレストラン、ホテル、レジャー施設のターゲティング広告が容易になります。乗客の体験を構成するのは1社ではないため、隣接した事業者にも恩恵があれば、顧客体験価値も向上します。
Webサイトでのユーザの動きがトラッキングされているのと同様に、船内の各種アクティビティでの行動履歴がトラッキングされ、オプショナルツアーの申し込み状況、食事の予約の履歴などが追跡できれば、クルーズ船会社は乗客の乗船体験をより深く理解して洞察を得て、チューニングを行うことが可能となります。

デジタルアシスタントは客室に常駐している必要がありません。船内の随所にタブレットその他のデジタルプレゼンスを配置すれば、船内のどこにいても均質なコンシェルジュを提供することができます。


<参考情報>